2023年は「日本株の年」になる 「日経平均4万円」レポート執筆者が解説する3つの強気ポイント日本株が“過小評価”されている現状から抜け出せる可能性はどこにある?
日本株が“過小評価”されている現状から抜け出せる可能性はどこにある?
3年余り続いたコロナ禍が一段落し、経済活動も本格的に再開する目処が立ってきた。
円安の動きも落ち着き、5月初頭には日経平均株価が年初来高値の2万9000円台を記録するなど、足元の日本経済は上向きの気配が漂う。
一方で、米国では3月に相次いだ銀行の経営破綻の影響が続き、5月1日には総資産31兆円のファースト・リパブリック・バンクが経営破綻した。リーマン・ショック以来、史上2番目の規模の銀行破綻となった。
米国で金融不安・物価高の終わりが見えないことから、日本経済の先行きは、また不透明さを増したようにも見える。そうしたなか、兜町ではあるレポートが改めて注目されている。
もくじ
〈2023年は日本株の年に 脱デフレで見えてくる日経平均4万円という「新しい景色」〉
2022年末時点の市況について、急激な利上げや景気減速などで低調な米国などの外国株に比べ、日本株が堅調に推移していると評価。諸外国と比べた日本の堅調さは、2022年よりも2023年に〈鮮明に〉なるとし、〈日本株への内外からの注目〉が高まり、〈2年後には日経平均4万円〉があり得ると締めくくられている。
同レポートは株価・為替相場の双方の乱高下に投資家が苦しんでいた昨年末の段階から今年の株高を予想したもので、足元では、まさに今このレポートの“予言”通り、株高基調が出現している。
ただ、そうは言っても、これまで日経平均の最高値(終値)はバブル期の1989年12月29日につけた3万8915円である。それを上回る4万円という強気な予想を、メガバンクのグループ会社が公式に表明するのはなぜか。
同レポートを執筆した三井住友DSアセットマネジメントのチーフグローバルストラテジスト・白木久史氏が言う。
「レポートを書いた時と若干足元の環境は変わっていますが、基本的に見解は変えていません。今年は『日本株の年』だと思っています。強気のポイントは3つあると考えています」
まだ見ぬ4万円台という“新しい景色”を見られるのだとすれば、その要因はどこにあるのか──
白木氏が指摘する第1のポイントは、「日本株が非常に割安な状態にある」ということだ。
「現在、2023年度の日本株(TOPIX)の予想PER(株価収益率=株価/1株あたり当期純利益の予想値)は約12倍で、これは歴史的な低水準なのです。割安になっているのは、今後、日本企業の成長が鈍化するのではないかと警戒されているからだと考えられます。つまり、日本企業がコロナ禍による経済停滞を完全に脱し、順調に業績を拡大させていくところを見せられれば、株価の大きな上昇を期待できるということです」
日本株が“過小評価”される現状から抜け出せる可能性
白木氏が、日本株が“過小評価”されている現状から抜け出せる可能性があると見る理由が、第2のポイントとなる「マイルドなインフレによる好循環の予兆」だ。
「エネルギーや食品の価格が上昇し、ユーロ圏で一時10%台、米国でも同9%台のインフレを記録しました。それに対して長くデフレに苦しんできた日本では、今年3月分の消費者物価指数(CPI)が前年同月比プラス3.2%と、適度でマイルドなインフレと評価できます」
もちろん、値上がりによる生活苦の声も少なくないが、“マイルドなインフレ”からの好循環を生み出すきっかけとなり得るのが、「賃上げ」だという。
「4月に連合が公表した賃上げ率は3.69%と、30年ぶりの高水準です。デフレ下では給料を上げなかった企業がマイルドなインフレ下で賃上げに転じていけば、消費が活性化する好循環が生まれやすい。1980年代後半のバブル期以来となるインフレと賃上げの両立によって、日本経済は様変わりするかもしれません。当社では、日本の名目GDPは今年度も来年度も2%前後、成長すると見ています」
バフェット来日の影響力
そして第3のポイントは、日本に生じたこうした変化を「外国人投資家」が評価し始めていることだ。かつて日本株を買っている人の大半は日本人だという時代もあったが、半数以上は「外国人投資家」が取引している。
「日本のマーケットは1日3兆円程度の売買がありますが、その6割にあたる1.8兆円は外国人投資家によるものです。IMFが予測する今年の日本の経済成長率はプラス1.3%で、G7のなかでもカナダ、米国並みに高い水準。外国人投資家の日本株に対する“期待感”はすでに出始めています」
そうした空気をさらに盛り上げたのが、今年4月に来日した“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏だ。
日経平均が過去最高に近い「3万8000円」に到達する可能性があると見る
「個人資産だけで15兆円、しかも投資した株を長期保有するスタイルで知られるバフェット氏が来日し、世界に向けて『日本株が買いだ』とのメッセージを発した事実は大きい。世界中の投資家が『日本株を持たないとまずい』となるわけで、この変化はとても大きいと言えます」
それらの点を鑑みて、白木氏は今年度中(2024年3月まで)に日経平均が過去最高に近い「3万8000円」に到達する可能性があると見る。
「先ほど述べた日本株(TOPIX)の予想PERは、市場の評価が高まることで、現在の約12倍から過去10年の平均である14倍近くまで回復すると考えられます。そうなると計算上、日経平均は3万8000円という上値が見えてくる。
その前提のひとつとなるのが、早ければ今年9月にも始まると予想されている米国の利下げです。国際分散投資をする海外投資家は、米国の金融緩和をきっかけに、日本株を含めた世界中の株式を買い始めると予想されるからです」
そしてそこからさらに日本株は上昇を続けると見ている。
「2024年の米国の景気は今年後半より良くなると予想されます。日本の輸出産業などもその恩恵に与って評価が高まり、再来年(2025年)の1月から3月にかけて、TOPIXの予想PERが15倍まで拡大すると、計算上は日経平均4万円を突破することになるのです」
日本経済の置かれた状況は、数十年ぶりに大きく変わろうとしているのかもしれない。