石破総理を操る黒幕「米外交問題評議会」は新NISAをどう“利用”してきたか?日米選挙後にトレンド大転換も
日米選挙後に、日本の個人投資家を“シン・石破ショック”が襲う可能性が出てきた。足元の株価指数・ドル円は自民総裁選“高市ラリー”時の高値を回復したものの、選挙後に石破総理の“飼い主”の意向が変化するだけで、相場トレンドは容易に転換しうるからだ。エコノミストの斎藤満氏は、「日銀の年内追加利上げはないと決めつけるのは早計だ」と警鐘を鳴らす。(メルマガ『マンさんの経済あらかると』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日銀の正常化シナリオは壊れていない
もくじ
日本の株式・為替市場は誰の意向で動いているか?
石破総裁が誕生して早々、彼は日銀の植田総裁と会談しました。そこで「個人的には今利上げをする時期ではない」と発言し、市場が大きく動きました。
これまで金融の正常化を支持する姿勢を見せていただけに、この「落差」が大きく、市場は大幅円安、株高で反応、長期金利は低下しました。
市場の反応の大きさに驚いたのか、石破総理はその後「基本的に植田総裁と同じ立場」と言い直しましたが、かつて反アベノミクスの立場にあった総理の「心変わり」の裏に何があったのでしょうか。
米共和党・米外交問題評議会(CFR)の圧力
1つの可能性は米国の圧力です。といっても、ホワイトハウスや米財務省ではありません。
石破総理は就任直後に世界有数の投資会社ブラックストーン社の共同経営者、スティーブ・シュワルツマン氏と面談したといいます。同社は日本でも積極的な投資を行っていて、今後も投資拡大を計画しています。そこで投資家サイドからの要望があった模様です。一投資家として、投資環境を考慮して利上げに反対、ということになったのか、政治的な意図があったのかは不明です。
スティーブ・シュワルツマン氏(出典:Copyright World Economic Forum (www.weforum.org), swiss-image.ch/Photo by Remy Steinegger, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons | 画像引用・キャプションは編集部)
スティーブ・シュワルツマン氏(出典:Copyright World Economic Forum (www.weforum.org), swiss-image.ch/Photo by Remy Steinegger, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons | 画像引用・キャプションは編集部)
そもそも、シュワルツマン氏はピーター・ピーターソン氏と共同でブラックストーン社を立ち上げましたが、このピーターソン氏はCFR(外交問題評議会)の重鎮です。シュワルツマン氏も共和党系CFRの立場にあります。
CFRは日本に対し、増税を含めた緊縮型財政を求め、そのため金融政策ではある程度緩和的な状況が必要と見ています。これまでも日銀の利上げには抵抗を示していました。
また、ブラックストーン社は中国でも投資をしていて、日本の利上げが中国市場の制約になるとみて、利上げには反対の立場をとります。
昨年秋にはブラックストーンの兄弟会社、ブラックロックのトップが岸田総理と会談し、日本マネーの米国還流支援策を求めたといいます。
これらを前提として岸田総理は新NISAを推し進め、今年になって新NISA経由で大規模な日本マネーが米国株式市場に流入しています。
今回も、ブラックストーン社が米国市場への資金流入を考え、低金利維持を望んだことは想像に難くありません。
衆院選前の「異常な株価・為替動向」に2つの要因
もう1つ、国内では10月27日に投開票の衆議院選挙が予定されています。選挙までの期間が短い中で、自民党支持の環境を整える必要があります。特に株式市場が不安定では、与党に不利と考えています。
そればかりか、政治資金規正法を強化する中で、政治家はパーティ収入が減り、選挙資金として「仕手株」経由の資金を作る必要が高まっています。
短期的に株価を押し上げ、選挙資金に回せるようにするには、市場に緩和持続、円安の期待を持たせておく必要がありました。
日米選挙後にはトレンド転換の可能性
しかし、「石破変節」も含めて、日銀の金融正常化を進めるうえでのハードルはさほど高くないとみられます。
国内での選挙を意識した要因は、10月27日の投開票で終わります。選挙が終わってしまえば「仕手株」がどうなろうと、市場のムードが冷えようと、もう投票には関係ありません。
では、海外要因はどうでしょうか。注目したい点が2つあります。
まずブラックストーン社のスティーブ・シュワルツマン氏は、共和党の大統領候補トランプ氏を支持しています。そしてトランプ氏は「ドル高は米国産業にとって大惨事だ」と言っています。彼が大統領になれば、FRBのパウエル議長を解任し、米国金利をより引き下げる人を後任に据える構えです。
彼にとって、日銀が利上げをして円高になることは歓迎で、日銀の金融正常化には追い風となります。シュワルツマン氏が米国政府を代弁して、日銀の利上げをけん制することはなくなるとみられます。
「ハリス大統領」誕生でも円高トレンドに
ではハリス大統領となった場合はどうでしょうか。
バイデン、ハリスを支持するCFRとしては、財政引き締め・金融緩和の組み合わせを希望しますが、よほど中国が危機に瀕さなければ、日銀の利上げを強硬に抑え込むことはないと見ます。
現に、植田総裁はこのCFRの圧力の中で、マイナス金利の解除、追加利上げを実行しています。
シュワルツマン氏が投資家代表として緩和継続を望むとしても、それは市場全般の声の1つにすぎなくなります。
日銀の「正常化シナリオ」は崩れていない
石破新総理の考えが大きく変わったことに多くの批判が出て、石破総理自身、その反響に驚き、発言の再修正も多くみられます。日銀への圧力ともいえる発言もトーンダウンし、直後には「基本的には植田総裁と同じ認識」と言っています。基本は日銀の考えで動けることになっています。その日銀も市場の反応に驚き、円高株安を引き起こした原因が日銀にあるとの批判を意識せざるを得なくなっています。
実際は、円高も株安も、その後の米国雇用統計の弱さから米国景気不安が生じ、日銀の利上げ当日の市場はむしろ株高で反応しています。米国景気不安が金利や株を動かしたのですが、メディアや市場は日銀の利上げのせいとの見方が多くなっています。
円安再進行に警戒感、「年内利上げ」も選択肢の1つに
その風向きがまた変わる動きがありました。9月の米雇用統計が一転して予想以上に強いものとなったことから、その指標を受けて現地4日にはドル円が一時149円台まで円安となりました。市場にはまた150円台に戻るとの観測まで出ました。
これを見て財務省の三村財務官が7日、さすがに口先介入に出ざるを得なくなりました。「為替市場の動きは緊張感をもって注視する」と述べ、ドル円は147円台まで押し戻されました。しかし、その後また148円から149円台に円安気味の動きとなっています。
日銀の追加利上げの背後には、行き過ぎた円安が必要以上に物価押上げ圧力になるとの判断がありました。そして追加利上げで一旦140円まで押し戻しましたが、ドル金利上昇もあってまた150円を脅かす動きとなり、財務省も注視するようになりました。
日銀の利上げにより、金利差を縮小し、円安エネルギーを削ぐことが再び正当化されようとしています。年内利上げはないと決めつけないほうがよいでしょう。
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年10月11日号(日銀の正常化シナリオは壊れていない)の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。当月配信済みバックナンバー(改めてネタニヤフ・リスク/石破内閣の本質/米金利に上振れリスク/2つの戦争合体は回避すべき/中国株上昇の特異性 etc.)もすぐに読めます。